メガバス×大野ゆうき、夢のコラボが遂に実現!トラビス7の全貌に迫る!
「今までにない。スローで巻いてスイングアクション!」。
トラビスセブンは、メガバスと大野ゆうき氏がタッグを組んで完成させた、まったく新しいジャンルのシーバスルアー。バイブレーションとも違う、シンペンとも違う独特の使い勝手が港湾のシーバスを魅了する。いったいこのルアーにはどのようなコンセプトが込められているのか? メガバス開発スタッフと大野ゆうき氏が直接対談で思いを語った。
まったく新しいジャンルのルアー。バイブレーションを流し込んでいた釣りが、トラビスセブンに置き換わる
※杉浦、山下、竹内 ・・・ メガバス開発スタッフ
―今日はこのルアーを開発することになった経緯から、コンセプト、開発秘話、メガバスのこだわりといった部分をお話しいただければと思います。まず、メガバスと大野さんが共同でルアーの開発をするのはこれが初めてですね。プロジェクトのスタートはいつですか?
【大野】 ずいぶん長いので、いつからだったか覚えてないです(笑)
【竹内】 開発を始めたのは2012年7月です。2年前ですね。
―アプローチはどちらから?
【山下】 きっかけはメガバスからです。
【大野】 もともと関わりがなかったわけではないので、今回このルアーの企画を一緒に行うことになりました。
―大野さんはいろいろなメーカーさんと様々な開発をされてますが、このルアーをメガバスとやるに当たって、どんな思いがあったのですか?
【大野】 コンセプトはシンプルに、スローに巻くだけで釣れるようなルアーにしようということですね。ただ巻くだけで釣れるルアーというのは、作る側にとってはとても難しいのですが、それをメガバスさんにお願いしました。
―誰がどこで使っても効果を出せるルアー、今まで大野さんが開発に関わってきたルアーのほとんどはそのコンセプトが通されていますよね。
【大野】 はい、使い勝手というところは常に重視してきました。
―トラビスセブンを事前に写真で拝見したところ、バイブレーションプラグに見えました。サイズとウエイトの比率も従来の標準的なバイブレーションに近いですが、実物はバイブレーションとは微妙に違う印象ですね。
【大野】 形はバイブレーションと思われがちですが、このルアーは厚みもあるし、動き的にもバイブレーションのカテゴリーではありません。速く巻けばバイブレーション的に使うことも可能ですが、コンセプトはナイトゲームでゆっくり巻いて使ってもらいたいルアー。トラビスはゆっくり巻いたときに理想の動きが出るルアーなんです。港湾部の流れの緩いところでも使ってほしいし、川のある程度流れがある場所でゆっくり巻きながら流すような釣りでも使ってもらいたい。そういうルアーです。
―なるほど、しかしバイブレーションでなければなんと表現したら良いのでしょうか。
【一同】 ニュージャンルなんですけど…。何がいいかな?(笑)
【大野】 実はここに来るまでずっと考えていたんですけど、思いつきませんでした(笑)
―ではそれは今後の宿題ですね。比重的にはスローシンキングですか?
【大野】 いや、結構速く沈みます。普通に頭から下がっていく感じですね。
―動きはどんなイメージですか?
【大野】 ピッチの小さな動きです。シンキングペンシルのようにアイが頭にあるタイプよりももっと動く幅が狭く、ゆっくり巻いても泳ぐ。動きの振り幅が小さく、なおかつその動きを幅広いスピード域で安定して出せるルアーです。
―それは先ほど出た話に通じるものですね。
【大野】 はい。リトリーブは人によって巻き方が速かったり、遅かったりするので、一番いいアクションが出るスピード域を狭めてしまうとよくない。いろいろなスピードでいいアクションが出るようにすれば、もっと釣りやすくなりますから。川でも、キャストして流されてくる間にルアーに掛かる抵抗が変化しますよね、テンションが変わるということは、要は巻いているスピードが変わるということなんです。川の場合は巻くスピードを一定にしていても、ルアーに対する水の当たり方で動きも少しずつ変わってきてしまう。そういう条件でも、安定して同じ泳ぎを出せるようにしたかったんです。
―水深は1m~5mとなっていますが、大野さん自身がトラビスセブンを主に使うのはどのレンジですか?
【大野】 5mでも使いますが、1mから3mで使うことが最も多いですね。バイブレーションはいろいろな種類が出ていますが、たとえば今までバイブレーションプラグを流し込んでいた釣りが、このルアーに置き換わると思っています。
―サイズは7cmのみの展開ですか?
【大野】 いまのところワンサイズです。必要なら他のサイズも考えるかもしれませんが、東京湾ではもっとも使用頻度が高いサイズを設定しているので、仮にほかのサイズを出したとしても、メインになるのはこの7cmだと思います。
―では次に、トラビスセブンを使うシチュエーションを教えてください。
【大野】 夜で、たとえば明暗部。橋が掛かっている場所で明暗の境目にルアーを流し込んでいく状況だったり、水深があまり深くなくて川底付近を這わせるようにゆっくり誘う場面だったり。メインは明暗部の釣りを想定していますね。
―その状況は従来のルアーでは攻めきれなかったということですね。
【大野】 たとえば同じレンジをバイブレーションで引いてくることはできるんですけど、そのスピードでは動きが出ない。それが原因で食わせられない魚がたくさんいるんです。それと、一番攻略したかったのは春のアミパターンでした。今年はアミパターンのシーズンがあまり良くなかったんですが、そんななかでもポツポツ口を使ってくれたので、求める段階まではきたのかなと感じています。アミパターンのときは、ゆっくり巻いても動くルアーじゃないと食わないんです。
―素朴な疑問ですが、アミパターンでなぜ、ミノーシェイプのこのルアーが効くのですか?
【大野】 そこが僕のシーバス釣りの考え方の根底になるんですが、ベイトに形とかを似せるという考えは僕のなかには一切なくて、マッチザバイト、つまりシーバスが口を使ってくれるものは何かということだけに絞って釣りをしています。皆さんも、明らかにイワシを食っているのにイワシと違うカラーで釣れたり、逆に色もサイズもピッタリ合わせているのに釣れなかったりということを実感していると思うんです。むしろそっちの方が多いかもしれませんね。僕のなかではスピード、アクション、レンジの三つが常にマッチザバイトのキーになっています。だから実際に食っているものと形が違っても、そこを合わせて行くことが大切だと考えています。
―なるほど。で、アミパターンの時に釣れない理由を潰していく過程で、スピードやレンジ、アクションを見直し、行き着いたのがこのルアーというわけですね。アミパターン以外ではどんな活用がありますか?
【大野】 秋は東京湾の奥にサッパがたくさん入ってきます。それを食いに大量のシーバスが川に入る時がひとつ。それからバイブレーションでボトムを転がして釣ることがありますが、そんな時もトラビスは効果的です。4月に川でテストした時、まったくベイトが浮いていなくて、もしかしたら下にいるかもしれないと考えてトラビスで底を流したんです。そうしたら、75cmくらいまでのシーバスが2~3時間で10本、15本とヒットしたうえ、通常のバイブレーションで食わせられない魚も釣ることが出来た。その魚が吐いたのがすべてハゼだったので、そういう捕食をしているときも効果的なんだということを確認できました。
大野ゆうきのこだわりと、メガバスのテクノロジーがひとつに融合
―ところで、どのスピードでも同じ動きが出せるルアーにするという課題、あるいは大野さんのコンセプトを、開発側としてはどのようにクリアしたのですか? またその際にこだわった部分はありますか?
【山下】 まずはそのスピードという部分で、大野さんと私たちメガバススタッフの感覚を合わせていくという作業が重要でしたね。そこが合うようになってからは、おおよそのピッチを出せるようになりました。
【大野】 僕の『もう少し』と開発側の『もう少し』は微妙に違うんです。そこを合わせて行かないと、なかなかスムーズには行かないんですね。たとえば泳ぎの振り幅をもう少し狭くしたいと言っても、そのもう少しが1ミリなのか、1センチなのかは測れないので、現場で見てもらうしかない。山下さんとは何度か会って、そういう感覚をすり合わせました。
【山下】 僕はそれを開発部に持ち帰って、改良したものを浜名湖でテストしてまた送って、という工程を繰り返しました。課題にしたのは理想のピッチと、速くても遅くても動くということ、あとは飛距離ですね。そういうところを一つずつ修正していくと、どこかがダメになる。それでそこを直すとまた別の場所がダメになる。その繰り返しですね。トライ&エラーを何度もやって、最終的にOKになったのがいまのモデルです。
【大野】 飛距離を出すために重くすれば動き始めが遅くなるし、動きも小さくなってしまう。じゃあ動きを大きくしようとウエイトの位置をずらせば今度は飛ばなくなったり、潜るレンジがコンセプトと違ってきたり。ひとつ動かすと全部が変わるということを覚悟したうえでやって行かないと、なかなかうまくいかないですね。それはメガバスさんだけでなく、どことやる時も同じです。
【山下】 途中のサンプルはバイブレーションとしてはいい出来だったのですが、どうやっても大野さんが満足する動きが出せず、もうバイブレーションに変えた方がいいと心が折れかけたこともありました(笑)
―やはりそういう段階があったんですね…。途中のサンプル自体もそれぞれ優秀なのに世に出ないというのは切ないですが、そんなこと言っていたら開発はできませんね(笑)
【竹内】 ただこの試行錯誤は社内のノウハウとして蓄積されていくので、無駄にはなりません。ここに今までのサンプルがあるんですが、うちで保管してあるものでもこれだけあります。大野さんだけに渡したものを含めると…。
【大野】 僕のところにはこの1.5倍から2倍くらいあります(笑)。アクションはいいけど飛距離とレンジがいま一つというように、どれか一つはいいんだけど他二つがダメとか。それが徐々に二つが良くなり、三つ目も近づいて…となって出来上がっていきました。
【竹内】 (エッジの強いプロトを見せながら)こういう風に背中を細くすれば動き出しは良くなって、ベイトフィッシュパターンにはいいんですが、アミパターンに使うにはピッチが速すぎてしまう。そこからアイの位置とウエイトの位置の微調整をして…。
―長さとウエイトは最初の段階である程度決まっているわけですよね?
【大野】 はい。その中で求めている結果が出なければ、形状を変えてくださいということで初期の要望を伝えています。そういうこともあって形は微妙に変わってはいます。ただボディサイズについてはある程度限定したため、難しさはあったと思います。
【山下】 サイズを変えないということには、メガバスとして強くこだわりました。サイズを変えれば簡単な部分も、それをせずにクリアしようと。
【竹内】 大野さんの場合はどんな魚でもいいわけではないんです。獲りたい魚というのがあって、この魚を釣りたい、そのためにルアーをアジャストしていくというやり方だから、ブレはなかったですね。
―ほかには何か、メガバスとしてのこだわりがありましたか?
【竹内】 メガバスというと、皆さんデザイン的なものに目が行くと思いますが、このルアーに関してはリアルな造形だけではなく、たとえば目はできるだけ大きくするなどキャラとしての可愛らしさを意識しました。これは大野さんの希望でもあります。そのためデザインのこだわりは持ちつつ、いままでとはちょっとテイストの違うものになっていると思います。もちろん、出来上がりの精度やバラつきのなさは、従来通りのメガバスクォリティーです。
【大野】 時間はかかりましたが、最初に頭に描いた通りのルアーになりましたね。
―では最後に、開発部長の杉浦さんからユーザーの皆様にメッセージをお願いします。
【杉浦】 いまは予定通り9月に完成して、皆さんにお届けできるよう頑張っています。このタイプは東京湾以外でも効果のあるルアーですので、大野さんのコンセプトをご理解いただいて、多くの皆さんにシーバスをキャッチしていただけたら幸いです。
―今日はどうもありがとうございました。
低水温期のアミパターンをはじめ、通常のミノーやバイブレーションが沈黙するタフな状況下においてそのポテンシャルを発揮するトラビスセブン。発売は間近だ。
http://www.megabass.co.jp/site/products/travis7/
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