照りゴチとも呼ばれる真夏の代表的ターゲット・マゴチ。サーフではヒラメと並ぶフラットフィッシュの人気魚だ。そんなマゴチのもう一つのフィールドが港湾部のシャロー。6月の東京湾を、徳永兼三さんがボートゲームで攻略する。
東北から沖縄まで広い範囲に生息するマゴチは、身近に狙えるフィッシュイーター。英語でフラットヘッドと呼ばれる通り、偏平な頭部に大きな口を持ち、砂地のボトムに潜んで獲物を待ち伏せる。今回の舞台となる東京湾は、湾奥から横浜、横須賀、そして千葉エリアと好ポイントが数多く存在するマゴチ釣りの本場。エサ釣りはもちろん、昨今ではルアーによるボートゲームがブームの兆しを見せている。そんなボートマゴチの攻略法を、メガバスプロスタッフの徳永兼三さんに実践してもらった。もちろんその基本メソッドはボートのみならず岸壁や防波堤からの場合もまったく同じ。マゴチのいる全国のベイエリアで試してもらいたい。
徳永さんは東京・羽田をベースにガイドサービスを営み、古くからボートのマゴチゲームを開拓してきたアングラー。毎年5月前半からマゴチの動向を追っている。
マゴチの習性
「マゴチはカサゴ目コチ科のフィッシュイーターで、沿岸部の波打ち際から水深30m前後に生息。夏になり、太陽が照りつけると産卵のため浅場に集まることから、釣り人の間では「照りゴチ」の名で親しまれている。釣り期は5月~9月。今がまさに最盛期だ。
東京湾のボートゲームでは45cmがアベレージ。 最大では60cmオーバーも期待できる。
食性はイワシ、ハゼ、イナッコなどの小魚と、エビ、カニといった甲殻類。東京湾の場合、シーズン前半はイワシやエビなどを主食とし、ハゼが育ってくるとハゼを捕食するケースが目立ってくる。いずれにしても、捕食レンジは基本的にボトムなので、いかに底を探るかが釣果を分けるポイントになる。
釣り上げたマゴチが吐き出した10cmほどのハゼ
ボトムトレースのセオリー
ボート、オカッパリを問わず、港湾のマゴチゲームで狙う水深は浅いところで30cm、深いときは5m超と幅がある。変化に乏しい広大なシャローは狙い目を絞りにくいが、「カケアガリを起点に探っていくことでより短時間でマゴチの居場所を知ることができます」と兼三さん。その際、オカッパリの場合は沖に投げて手前に引いてくる“アップヒル”のトレースがほとんどだが、ボートの場合はカケアガリの沖側から“ダウンヒル”で探ることも可能。自分の立ち位置に応じて臨機応変に攻めてみよう。
※アップヒル…水深の深い側にルアーを投入し、浅いほうへと上げながら探る方法。
※ダウンヒル…アップヒルとは逆に、浅いほうから深いほうへと落としながら探る方法。
攻め方の基本①リフト&フォール
マゴチ狙いの王道はリフト&フォール。キャスト後、ルアーが着底したらロッドを立てて泳がせ、再びロッドを下げながらラインスラックを巻き取るという動作でボトム近辺を探っていく。ロッドを立てる代わりにリーリングで1~2m泳がせて、止めてフォールという方法も効果的。どちらの場合もヒットチャンスはアクション後のフォール。ボトムから浮き上がったルアーが再び着底する直前に「コン!」と明確なアタリがくることが多い。
ボトムから浮かせて再びフォール。この繰り返しでマゴチを誘う。
攻め方の基本②ズル引き
ボトムが砂地で根掛かりのリスクが少ないケースでは、海底を引きずるようにトレースする方法もある。この場合も動いたルアーが止まった時にアタリが出ることが多い。
ロッドを水平方向にゆっくりと引いてルアーを動かす。ソフトルアー使用時にはとくに有効だ。
マゴチの口は堅い。アタリは鋭く!
エサ釣りでは「マゴチ20」などと言って、アタリが来てから20数えてじっくり食い込ませることがセオリーとされるが、ルアーの場合は基本即合わせ。口の堅いマゴチゆえ、しっかりフッキングしよう。中途半端な針掛かりでは強烈なヘッドシェイクで外されてしまう。
ファイトはラインを緩めず一気に決めるべし!
ヒットするとマゴチは首を振ってハリを外そうとする。大型の引きをいなす場合もラインは常にテンションを保ち、速やかに取り込んでしまおう。
アワセは鋭く行うこと。また、ファイト時は首振りにもラインを緩めずに対処したい
マゴチ攻略のルアー①ソフトルアー+ジグヘッド
ソフトルアーを使う場合は、シャッドテールタイプやカーリーテールタイプなど、動きの良いソフトルアーをジグヘッドにセットして使う。サイズは3インチ~5インチ。喰われているベイトサイズに合わせると、バイトの確率はより高くなる。ジグヘッドのウエイトは水深次第だが、港湾シャローの場合は10~15g前後が標準。ノーマルのシングルフックタイプのほか、トリプルフックをセットできるタイプ、ブレード付きのタイプ等があるので、ポイントの状況に応じて使い分けたい。
写真上はトリプルフックをセットできるジグヘッドに装着した例。 下はプレートの振動とフラッシングをプラスしたメガバスのボトムスラッシュ。
レンジキープ能力も高い。 なお、根掛かりの多い場所ではシングルフックのノーマルタイプを選ぶと良い(写真2枚目)。
マゴチ攻略のルアー②ハードルアー
ハードルアーはテッパンバイブをはじめとしたバイブレーションプラグと、スピンテールジグ、メタルジグなどが効果的。7g~40gくらいまで使用可能だが、10~30gのものが使いやすい。ハードルアーの利点は手返しが良いことと、フッキングが確実なこと。アピール力の高さや、何匹釣っても壊れない丈夫さでもソフトルアーに勝る。根掛かりの少ないポイントではぜひ試してみたい。使い方はリフト&フォールが基本となる。
ソフトルアー、ハードルアーともにボトム付近をゆっくりトレースできるものが理想。
ボトムに到達しなかったり、沈みが速すぎたりしないよう、水深や潮流に応じて重さを選ぶ。
サイキックもマゴチに強いルアーだ。
実釣はシーバス交じりで多数ヒット
取材当日は直前に通過した台風の影響で大雨が降り、増水した河川内にカタクチイワシが大量に群れている状態。魚探には表層からボトムまで反応が出ていた。
兼三さんはスピンテールジグのエクスクルーでボトムをトレースする。狙いは水深3mから浅くなり始めるカケアガリの周辺だ。しかしイワシを追って河川内に入ってきたシーバスがマゴチより先にルアーをアタックしてしまい、なかなか本命にたどり着けない。
「船道からハンプ状にせり出した緩やかなカケアガリをエクスクルーでトレースしていますが、イワシの反応は想像以上に濃いですね。きっとこの大雨で河川内の魚の分布が変わってしまったのでしょう」
「この時期にシーバスがこんなにいるのは珍しい」と兼三さん。
シーバスは次々にヒット、しかも良型揃いだった。
それでもエクスクルーを投げ続け、水深3m近辺で最も反応がいいことを突き止めた兼三さんは、その水深で何度も船を流し直してマゴチを連発。最大はスピンドルワームでキャッチした50cmほどのマゴチ。サイズ的には不満の残る釣果だが、連打することでパターンを証明して見せた。
兼三さんによれば、今年のマゴチは開幕が早く、魚影も例年より濃いとのこと。ボートゲームのファンも増え、受け入れるガイドサービスや乗合船の数も増えていることから、今年は大きな釣果が期待できそうだ。まだ未体験のアングラーは、このチャンスに強烈なヘッドシェイクの醍醐味を味わってほしい。
クロダイ・キビレも面白い!NEWメソッド「ビズラのフォーリングゲーム」
夏の東京湾にはマゴチ以外にも熱いターゲットがいる。それがクロダイ&キビレだ。釣り方としてはストラクチャーに沿ってソフトベイトを落とし込むのがこれまでのセオリーだが、兼三さんはこれをハードルアーのビズラで行う。ビズラを使う利点は手返しの良さと、縦にも横にも探れる点。通常のスピンテールジグと異なり下部にブレードがあるため、スタックしにくいこともビズラの利点だ。
釣り方は二通り。写真のようなバースではピンポイントにピッチングで入れ、支柱をはじめとした縦ストラクチャーに沿ってフリーフォールで落としていく。
テトラポッドでは前打ちスタイルで階段状に落としながら探る。テトラに乗ったら静かにリフトして再びフォール。数メートル探って反応がなければ巻き取るが、ブレードの波動とフラッシングの効果で巻き取り途中に食ってくることもある。
今回の実釣では全域に散ったシーバスの猛攻で終わってしまったが、水が落ち着けばクロダイ、キビレは手堅いターゲット。ホームグラウンドで同じようなポイントがあったら、ぜひトライされたし。マゴチとともに、これからベストシーズンを迎える港湾のルアーゲームを楽しもう。
TACKLE
マゴチ(ハードルアー)
REEL:RC-IDATEN256
LINE:PE1.2号+フロロカーボン4号
LURE:エクスクルー30g、メタルエッジ、nadar スパロー
マゴチ(ソフトルアー)
REEL:3000番
LINE:PE1号+フロロカーボン4号
LURE:スーパースピンドルワームSW(ジグヘッドリグ)
クロダイ(チヌジグ)
REEL:3000番
LINE:PE1.2号+フロロカーボン4号
LURE:nadar チヌジグ
クロダイ(ビズラ)
ROD:シルバーシャドウ SS-63MC
REEL:ベイトリール(7.1:1)
LINE:PE1号+フロロカーボン2.5号
LURE:nadar ビズラ