VATALION(T-21)
前回のブログでは、ローリングとウォブリングの2つのルアーアクションについての話と、ある1つのジャンルでは、ほとんどのルアーがウォブリング主体であるという話をしました。
では、その1つのジャンルとは何か、というと俗にいう「ビッグベイト」だと思います。
代表なものだとS字アクションだと思いますが、他にも様々なアクションをするビッグベイトがあります。しかし、そのほとんどが、ローリングを意図的に抑えて、ウォブリング主体のアクションとされています。
なぜか?
魚は体をロールさせて泳がない。
極論はこれなのかもしれません。
しかし、そうなると1つ疑問が生まれます。
魚はS字アクションで泳ぐのでしょうか。
これは、決してS字アクションのルアーを否定するわけではありません。
メガバス(ito ENGINEERING)にも、i-SLIDEシリーズがあります。
魚を寄せる、釣る、という能力では、ビッグベイトのサイズ感も相まって、他のルアーには無い抜群の魅力があると思います。
しかし、一方でルアーとしての純粋なアクションであるローリングを主体としたビッグベイトというのはどうなのか?魚と対峙した際、どのような反応を見せてくれるのか?
こういった疑問が、ルアー開発のヒントになることもあるのです。
シーバスが好んで捕食するコノシロ。このパターンを再現する為に生まれた「ビッグバイブレーション:KONOSIRUS」。この製品を販売した時に、良く耳にしたのが、このサイズのブラックバス用のバイブレーションがあれば良いのにという嬉しい声。
バイブレーションというファストムービングの釣りにおいて、あえて「止める」というコンセプトを持った「サスペンドバイブ:FERMATA」。
この2つのルアーをきっかけに、
『110mmを超えるサイズで、なおかつ「止める・漂わせる」事が出来るビッグバイブレーション』という、コンセプトで開発をスタートした製品があります。
まず、「止める・漂わせる」という点において、ナチュラルなアクションを演出するためには、ボディをジョイントにする事でより一層、ルアーが自発的にアクションするのではないかと考えました。
次に、アクション。これが最も問題で、コノシラスを開発していた際すでに経験した事ですが、ボディサイズが大きくなると、おのずと引き抵抗が大きくなり、ストレスになります。
ましてや、ウォブリングを主体としたアクションだとより一層です。
そして何より、「止める・漂わせる」という点では、ルアーの仕様はフローティングかスローフローティング、サスペンドになります。
そうなれば、誘えるレンジもおのずと浅くなります。
せっかくの110mmという大きいサイズ感にもかかわらず、浅めのレンジの魚にしか対応できないルアーだともったいない。
仮に1.0mの潜行レンジだとしても、2m、3mもっと深くの魚にもアピールさせたい、となればやはり明滅が効くローリング主体のアクションが理想になります。
ここにきてようやく前回のブログや、上に書いた前振りの長かったローリングアクションの話に繋がります…。
深いレンジの魚も誘え、なおかつルアーの引き抵抗も抑えられるという点で、この製品には「ローリング」主体のアクションがベストだと考えました。
製品名「VATALION」
あくまでも、『110mmを超えるサイズで、なおかつ「止める・漂わせる」事が出来るビッグバイブレーション』というコンセプト。
ギル型ビッグベイトと呼ばれても構いません。
しかし、明らかに現存するそれらとは違うアクションをもった製品に仕上がりました。
製品化にあたり、現在確定しているこのルアーの仕様は2つあります。
フローティングとスローフローティングです。
悩みに悩んだ結果、決め切れなかったというのが本音ですが、使用するシュチエーションによってしっかりと使い分けできるものになっています。
さて、ここでラインアイの位置に注目です。
(画像①)
(画像②)
i-SLIDE(画像②)のような鼻や口元付近にラインアイを配置するとローリングアクションは抑えられ、ウォブリング主体のアクションになります。
しかしVATALIONに求めるのはバイブレーションXウルトラのような、ローリングアクションです。
ゆえに、ラインアイはi-SLIDEに比べ大きく後方(画像①)に配置されています。
画像①のような位置にラインアイがあるとローリングアクションが出る事以外にも、起こる現象があります。ラインアイが後方にあることで、リトリーブ時にラインアイより前のボディ(おでこの部分)がリップの役割をし、水を受け、緩やかではありますが、レンジを下げながら潜っていきます。
先に述べた、フローティングとスローフローティングの2つの仕様があるのは、上記の特性ゆえの、リトリーブ時での潜行深度の違いです。
フローティングとスローフローティングのウエイトの差は約2gです。
この2gの差で、潜行レンジが大きく変わります。
例えば、水深は3m~4mだが、ウィードが水面から1.5mの所まで生えている時。
フローティングだとストレスなくウィードの面をトレース出来ますが、スローフローティングだとレンジが入り過ぎてしまいウィードに絡んでストレスになります。
しかし、リザーバーの岩盤エリアなどで明らかに魚の位置が深いときは、よりレンジが入るスローフローティングが有利になります。
このようなシュチエーションによる使い分けから、どちらの仕様も必要だという結論に至りました。
もちろんフローティングとスローフローティングで、アクションの違いがありますが、それは次回、アクションの解説のときにとっておこうと思います。
つづく