フィッシングショーOSAKAで衝撃的なデビューを飾った第3代オールニューエヴォルジオン。メガバスとアイティオーエンジニアリングファクトリーでは、初の試みとなるハイブリッドチタンコンストラクションをついに実用化。ショー開催中も、ものすごい人波の中、展示物は試作品ということもあって、アンタッチャブル。ギャラリーに来てくれたお客さんには特別に触っていただいたようですが、何よりも手にしたアングラーたちの第一声は、「軽い!!」のひとこと。本来、超軽量金属として知られるチタンではあるが、比重で考えれば、軽いのは炭素繊維であるカーボンの方。やはりいくら軽いとはいえども、チタンの比重はカーボンよりはある。それが、どういうわけか、今度のチタンロッド、NEWエヴォは、メチャ軽い。そこらへんの高弾性ロッドよりもはるかに軽い。
その秘密は、より濃密さを増しながら形状記憶特性を高めた最新のチタンファイバーと、チタンとカーボンファイバーをヒュージョンするときに使用されるレジン(糊)の量を驚異的に少なくできたことにある。いわば、超低レジンによる異素材同士のコンポジットシャフトの実現である。
高弾性カーボンロッドは、たしかに軽いが、その分、パキっとした張りが強く、若干トルク(ネバリ)に欠ける。しかし、その張りの高さは高い振動伝達性とキャストインパクトをもたらし、スキルの高いアングラーが使えば、この上ないダイレクタビリティと高いフィッシングパフォーマンスを発揮する。使い手に、鋭い運動能力を要求する。
一方のハイブリッドチタンのNEWエヴォルジオンは、そんな高弾性ロッドと同等の軽さを身につけていながら、しなやかでトルクフルなシャフトパフォーマンスを発揮する。もはや、個人的には重くて太いグラスロッドはいらなくなった。NEWエヴォでは、シャフト全体にかかる応力をバットセクションに濃密に融合したチタンのバネが受け止める。ティップ方向は、超低レジンの最新の高伸度グラファイトがチタン製の粘っこいバットセクションとシンクロしたナチュラルなベンディングフィーリングで仕事をする。
巻きの釣り(ファストムービングゲーム)では、何よりもオートマチックに魚がフックアップしてしまうノリの良さが光る。そして、テイクバックキャスト時のルアーの自重をロッドブランク全体に乗せて、その自重感を感じながらリリースできる、キャスティングのスィートスポットが広いイージーキャストが可能。タメが効く。ある意味、アングラーに対して、そんなに研ぎ澄ました感覚を要求しない、イージーオペレーションが高い次元で出来てしまうので、釣りがうまくなったかのような錯覚を起こすロッド。クルマに例えたら、ARMS CHALLENGEが技術の粋をぶち込んだF-1、X7はコンスタントメッシュ式ドグミッションのレーシングコンペティション。NEWエヴォルジオンはパドルシフトのATフェラーリってところかな。快適で速いです。
まあ、どんなロッドを選ぶにしろ、竿である以上、マンタックルインターフェイスが重要で、いずれのロッドも、気持ちよさを追求している。社内の若手エンジニア達に日頃言っているのは、この数字に表れない感性を磨いてほしいということ。乗る車なんかなんでもいい。食べるものなんかなんでもいい。着るものもなんでもいい・・・ってひとだと、効率的なスペック追求の仕事は出来ても、使い手の心を刺激してくれるアーティスティックな道具は生み出せない。
釣れれば何でもいいはずの、アメリカのトッププロトーナメントの世界でさえ、最後は、メンタルの気持ちよさを無意識に求めてしまうメガバスUSプロチームのファイナルプロト段階の要求は、スレッドの巻き方だったり、色だったり、あんまし釣りに関係なさそうな、カタチだったり、道具に宿すメッセージだったりする。結果、市場リリースの納期が遅れるのだが・・・。
感性の高まりは非効率的で本能の蛮行ともいえる論理的でないところからやってくるものだ。それはもしかしたら、恋愛と似ているかもしれない。