毎朝5時起きの早朝テストフィッシングをこなして出勤する途中、通学路を行く学生たちの服装をなにげに見ていたら、ふと10月になったんだと実感。 要素開発仕事の場合、来年春とか夏に投入する技術や新しい概念を先読みして実施しなければならないから、テスト中の私のアタマの中は「初夏」なのだ。長いこと開発稼業をやっているのに、季節感のギャップへの戸惑いになかなか慣れません。スーパーの野菜コーナーや鮮魚コーナー行くとなおさら。
当社は9月決算なので、例年8月の盆明けから9月エンドは鬼のような忙しさで日めくりカレンダーが飛んで?いく。各地国内拠点も増え海外業務も多様化したことで、この期間は浜松の本社に全社員が顔を合わせる日は滅多にないですが、決算も終えた10月初旬の現在は、全員が浜松で元気に顔を合わせたのをいいことに、今夜は久しぶりに慰労会(飲み会)を開くことに。今年も世界中のアングラーに支えられ増収増益で決算を終えることができ、また新たな課題に身を投じる10月となりました。とはいっても本質的にやることは同じ。NO CHALLENGE,NO MEGABASS.ですね。
特に技術開発面でいえば、マグホールド、アシンメトリックバランサー、LBO(リニアベアリングオシレーター)、エヴォルジオンのハイブリッドタイタニウムやMSXグラファイトなど、地味で愚直な要素開発の末に実用化された様々の新しい概念や技術が完成し期内に導入できたのは、一人のアングラーとしても釣りの先進性の余地を垣間見た気がしてモチベーションが上がった。 今期もそれらのブラッシュアップに加え、28年に及ぶ伝統の継承アイテムにも力を込めていきたいと思います。開発チームも燃えている。
さて、多くのアングラーから催促を頂いているNEW エヴォルジオンのインプレの続きですが、いよいよF5オーバーの、例によって個人的主観を述ようと思います。 アイティオーブランドの製品は、個人的に私が欲しいものを作っていますので、今後、機種展開も含めて必要と感じたときにラインアップとして加えられるか、チタンをはじめとする昨今の資材原料価格の上昇次第では、作りたくても作れないことも想定しています。生産稼働時間と生産数という視点でみても、X4等と比較すれば限定生産品といっていいでしょう。それだけに、初代エヴォルジオンがそうだったように、どんなにメソッドが多様化しても「一度手にしたら末永く使えるロッド」であることが第一義のコンセプトとして開発。 では、各機種説明していきましょう。
○ F5・1/2-68Ti DIABLO STAGEⅢ(ディアブロ・ステージ3) 初代エヴォルジオンにフラッグシップモデルとしてラインアップされたディアブロの正常進化版です。これ一本で中型クランクやバイブ、スピナーベイトなどの巻物系ルアー、フロロラインを使った高比重ワーム、場合によっては大型のトップウォーター、I-SLIDE135Bくらいなら何とかこなしてしまうパワーバーサタイルロッドです。近年の東海~西日本の釣りでは、このクラスはへヴィーアクションクラスというよりも、スタンダードクラスになりつつあり、私自身ロケなどでは絶対に外せないマルチパーパスロッドとして必ず持っていきます。2代目エヴォのディアブロよりも若干マイルドな味付けで、初代エヴォのディアブロのしっとり感を継承しながらも、圧倒的に軽量化、軽快感を追求して作り込んできました。個人的に長く使いたいロッドですね。
○ F5・1/2-70Ti SUPER DIABLO-Ⅱ(スーパーディアブロ2) 2代目エヴォルジオンから正式採用された、オリジナルディアブロよりも4インチ長いロングバージョン。ディアブロよりも若干ファストテーパーで仕上げているので、ソフトベイトを軸にした食わせのカヴァーゲームでよく使っているロッドです。軽快なフリップ操作がしやすくディアブロより4インチ長いという持ち重りの重さを払拭しています。むしろ、岸釣り主体なら、オリジナルディアブロよりこちらのスーパーディアブロを好むユーザーも多いようです。 ボートからのアプローチからだったら、琵琶湖などウィードカットを多用するバイブレーションゲームやスピナーベイトで使うと、シャキっとしたフィーリングで使い勝手がいいです。
歴代エヴォルジオンはしなやかさがウリでしたが、2代目ではそこにハイテンション特性が加わり、3代目の新型エヴォでは、しなやかでありながら、感度もかなり良いのが判っていただけると思います。 これは、初代GTiモデルのブランク構造を進化させたグラファイトティップ+チタンファイバーコンポジットバットの減衰を同調させるチューニングを何度も煮詰めていった結果たどりついたフィーリング。工学的に進歩させたのが3割で、7割は、いってみればヒトの感覚を研ぎ澄まして挑んだ「調律」による熟成。
2014年大阪フィッシングショーで展示したのが、プロトタイプAクラス、その後、各ショップさんイベントで展示したのが、そこからチューニングしはじめたプロトタイプBクラス。そして社内のテストフィッシングも佳境に入った頃、チタンとカーボンのコンポジット比率を調整して各パーツレイアウトのバランス取りを施したのがプロトタイプC。 量産モデルでは、進化したプロトタイプCのスペックをベースに、さらに最後の調律を施して生産していますので、Fショーや展示会でエヴォに触れて実際のプロダクトモデルを購入された多くの方々から、「軽快になった」「感度が上がった気がする」「ハイテーパーになった」「よく曲がる」「ティップの色がマットのガンフィニッシュになったね」「ハンドルの長さやバランスがよくなった」などの感想をいただきました。
プロトAから展示してきた私としても、こうした違いに気付いてくれるのはとても嬉しいこと。なんでも製品化するときには、最後の5%が肝心なので。 ファクトリースタッフもNEWエヴォがやっと完成し市販化にこぎつけた時、市販間際に専用ロッドケースをプレゼントしちゃうなど、詰めきった感があるようです。私個人としては、さらにやり込んでいきますけどね。
○F6・1/2-72Ti Mephisto(メフィスト) メフィストは、かつて一世を風靡したオロチ・フュージコンタクトの人気アイテム。ヒュージコンタクトはDNAらせん状のクロス構造で、スパイラル構造は現在もシャフトのネジレ剛性を上げ、強靭なロッドを作る上ではテッパンの設計手法。メガバスでは、これを進化させ「SLXグラファイト」構造へと昇華。オフショアゲームロッドの「TRIGIA」や、俳優のS・Tさんオーダーメイドの「デストロイヤーTS」モデルで採用されています。
一方の新型メフィストは、新型エヴォ用に開発されたハイブリッドタイタニウム構造。スパイラル製法では工法上、若干レジンの量が多くなることもあるのを徹底的に低レジン化、持ち重り感を軽減化させるため、C40グラファイトと細かいチタンファイバーをコンポジットする製法で対応。 ネジレ剛性では、検証方法によっては、やはりSLXに若干の軍配があがるものの、軽快感とタテ剛性についてはSLXを大幅に上回る結果となり、ハイブリッドタイタニウムでメフィストを作っても、おつりがあってなお「感度」に磨きをかけることができたと思う。 フロッグやハイピッチで手際よく繰り返すパンチングなど、カヴァー専用ロッドとして使うことが多いが、I-SLIDEなどのスイムベイトも頻繁にこのメフィストを使います。個人的には、ヒュージコンタクトのメフィストは、まさにハイパワーシャフト感モリモリ(ある意味このド太いトルクフィーリングは捨てがたく、いまだファンも多い)でしたが、エヴォのメフィストでは、繊細で快適なロッドワークができますね。
○F7-76Ti WHITE PYTHON(ホワイトパイソン) オロチエヴォのホワイトパイソンといえば、小塚タクヤ君の相棒として世界の怪魚と渡り合ってきたスペシャルファンクションアイテム。年々ハイパワー化を突き詰めていった結果、真の意味で大蛇の毒っ気が強くなっていたのですが、小塚君と彼のオリジナルロッド「ディアモンスター」を立ち上げたことで、ホワイトパイソンはもう一度白紙の状態から新たにバス専用ロッドとして設計することができました。なので、オロチエヴォブランドで再びホワイトパイソンを作ることはないので、いまお持ちの方は大事に使い続けてください。メガバス唯一のハイパワークロスオーバーロッドなので。
そんなわけでNEWエヴォのホワイトパイソンには、新製法のハイブリッドタイタニウム構造を新規で思い切りぶち込めたのもあって、ビッグベイトゲーム、ヘヴィカヴァーゲーム、ヘヴィウエイテッドスピナーベイト、ディープのスイムジグ、ビッグスプーンにいたるまで、私自身の釣りで考え得るモンスターハンティングの荒業をコレ一本でこなすパーソナルな設計ができ、オロチエヴォのホワイトパイソンより軽快に「バス」釣りができるようになった。
いつか言ったかもしれませんが、オリデスX7は、ドグミッションのレーシングカー。ダイレクタビリティと勝つための性能こそが命題。ARMSは、メガバスと私のロッド理念の集大成ともいえるパーソナルなリミテッドエディション。エヴォルジオンは、快適で速い現代のF-1トランスミッションを搭載した快適なスポーツカーを彷彿させる使い心地とハイパフォーマンスが命題。 この命題に向かって新型エヴォでハイパワーシャフトを作ると、新メフィストや新ホワイトパイソンになった。快適性能も追求した上でモンスターとガチでファイトできるロッド。仕留めたビッグフィッシュの傍らに、そっと置いて眺めたくなるロッド。そんなロッドが少なくなった現代、ニューエヴォのホワイトパイソンは、そんな悦に浸る瞬間のためだけに心血注いで作ったロッド。わかるヒトにだけわかればいいという・・・ランボルギーニみたいな存在か。