メガバステクノロジー | Megabass-メガバス

メガバステクノロジー

 

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フィッシングテクノロジーの進歩はカタツムリの歩様とはいえ、日進月歩の感があるが、長くこの仕事をやってきたせいだろうか。私は、あらためてアナログ時代のテクノロジーの方に凄味を感じてしまう。

 

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現代のシュミレーションデータに基づく最先端の3Dエンジニアリングは、それはそれで理にかなった合理的な製品を生み出しはするものの、そこにクラフツマンの汗や血の匂いを感じることは稀(まれ)だ。なので、再び私が一昨年前に本社ファクトリーとアトリエの統括へと現場復帰してからは、人の感性や情感を重視したモノづくりを若いスタッフ達に伝承を兼ねて重視している。従って、感覚的なものも含めて細部に至るまで要求を出すので、スタッフには芸術的センスと豊富な釣獲経験も大いに必要とされる。アイティオースペチアーレやモノブロックなどは、メガバスファクトリーの中でも高度な感性を備えた熟練スタッフだけが関与することが許されるという特別な作品である。

 

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クルマも、職人たちがハンマーを叩きラインやフォルムを生み出す、幾種類ものスクレーパーやカッターを手にクレイモデルを仕上げていく、など人々の手を介した多大な労力を注入して作り上げた昔のクルマと、社会経験の少ない20~30代のコンピュータオペレーターが作った消費財として作られたクルマとでは、そもそも創造性のステージが違う。同じクルマとは言え、その存在感も質感も大いに異なる別種のものである。

膨大なフィールドテストから導き出した解とそれを熟練の職人たちの手で再現していく釣り道具作りは、特にルアー製作においては重要だ。作り手の情念や熱感は、そうした過程を経てはじめて製品に宿されるものだからだ。

 

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DEEP-Xシリーズから始まった球体重心の移動理論は、自著「鬼手仏心」でも記したとおり、アナログ時代の最たるテクノロジーだが、あれは作り手の独創性とアングラーの釣獲への情念がひとつとなって、雪がちらつくある朝、フィールドで突如として偶発的に誕生したシステムだ。多目的重心移動は、私にとっては、「神の設計図」に見える。突如何かが天から降りてきて作り手の私に憑依して生み出されたとしたとしか思えないほど、およそ1年に渡り琵琶湖長浜の取水塔につくサスペンドのビッグと、池原のティンバーにつくバスを急角潜行釣法で獲るフィールドテストでの苦闘が覚醒させたものである。

 

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バスルアーにおいては、こうしてメガバスから広がっていった重心移動システムも、いよいよLBO(リニアベアリングオシレーター PAT.)へと発展し、ソルトルアー「マリンギャング」シリーズを中心に展開を広げている。LBOの概念と技術は、他業界に向けて開発してきたもので、当初、メガバスではフィッシング部門への導入は少々過剰ともいえるものだった。

 

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LBOは、多目的重心移動のように急角潜行には寄与しないが、球形重心の転がり抵抗による重点移動ロスを極限まで低減化させ、重点がわずか2~4度ほどの傾斜角で瞬間移動。キャスト時の瞬間に磁気から離脱し、強大な慣性ベクトルを発生させて飛行の推進力を生み出し、暴風・逆風時でも圧倒的なキャスタビリティを叩きだす。全国的にも爆風エリアといわれる伊勢・遠州三河湾・駿河湾でアゲインストの風が吹いた時、マリンギャングなしのサーフの釣りは、あり得ないと思えるほどだ。

 

そんなLBOも、‘17年の現段階において、次なるステージへと大きな進化を遂げようとしている。現在、実験中のLBOⅡも特許取得段階にあり、ルアーの低重心化と重点の瞬間移動に寄与するスグレもので、より優れたルアーを生み出したいというエンジニアの強い情念が、さらなる技術革新を促進させ誕生したものだ。

 

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80数ケの無限ループ配列されたベアリングボールの集積体自身を重心とした新たな構造体は、ベアリングループの動きが「見える化」されたシースルー構造となり、これまでのLBOと違ってシャフトレスとなる。これによって、ルアーのロール軸上よりも下方にマウントする低重心化が可能となり、ルアー内壁に設けられたレーンのインサイド(内側)を移動する。ルアーアクションがよりレスポンシブになる新たな重心システムである。

 

これを搭載するルアーは、熱心なお客様からの要望で、メガバスとアイティオーエンジニアリングを象徴する2製品に導入する計画でテストが進行中。搭載されたあかつきには、それらルアーは、これまでの常識を大きく覆す、時代のエポックメイキングになるかもしれない。

 

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新型LBOⅡの組み上げは、最新鋭の精密工作機器に加え、大いにクラフツマンの手を介する精緻なものである。そこにメガバスのモノづくりの原点ともいえる、情念の注入がある。

 

 

 

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