DESTROYERカーボンヘッドがデビューを控えたさ中、早速、その圧倒的なレスポンシビリティと剛性感を体感すべく、デカバス狩りに挑んだロケだった。
ワンド奥のインレットは枯れ、あちこちターンオーバーも散見。ボディウォーターが強いはずだったが、そこはオダの密集地帯。スタックトラブルに見舞われるリスキーなエリアなので、トリプルフックを抱いたプラグをブチ込みたくないところだから、逆に、誰もがやるジグやテキサスではサイズがいまいちだ。
そこで、沖側にディスタンスをとって、オーバーハング奥のレイダウン、オダ密集地帯の表層アプローチにシフト。ショア沿いの密集カバー奥に潜む、ソフトベイトのフォールには反応を示さなかった難攻不落のビッグヘッドを、あえてハードベイトを使って表層のオープンへと引き出す作戦。
ルアーは、デカバス一撃必中トップ、ここぞ!という時のI-LOUD(アイラウド)だ。
I-LOUDは、ピッチがゆるめのノイジーといった存在。通常の羽モノ・ノイジーよりも、グネリグネリしながら騒々しいサウンドを発する。水を押しのける「重量級ローリング」が唯一無二のヘヴィスイッシャーだ。
内部には、ラダーバランサー(PAT.P)が仕込まれており、リアの軽快なスウィッシュサウンドに加えて、ワンテンポ遅れて「重たいロートーン・サウンド」を発する。この複合インパクトがデカバスを比較的イージーに誘い出してくれる。
これまでも何度も日中のドピーカンのフィールドで、ここぞという時にビッグフィッシュを誘い出してきたI-LOUD。特にターンオーバーエリアの状況では、クレイジーな釣果を叩きだしてきた十八番ルアー。
ロッドは、オリジナルデストロイヤーに新たに加わった、“ファインチューニングシリーズ”の「カーボンヘッド」モデル。
リールシート内部構造を進化させ、ブランクス支軸剛性がスタンダードよりも、“過剰に”強化されており、体感性の感度をさらに際立たせている。
40年以上も釣りをしていて、久しぶりに「緊張感」を感じさせてくれるロッドだ。ふと、初代オリデスのピンク・スレッド、「リミテッドモデル」に通じるものがあると思い浮かんだ。あの時は、カーボンプリプレグを極限までダイエットさせ、カッティングパターンの変更やレジン量の低減化、EVAグリップ長のダイエットなど、当時としてやれることは何でもやった感がある。
一方の「カーボンヘッド」モデルは、振り抜きフィーリングも、もともと鋭かったスタンダードモデルよりさらにシャープなものになり、さらに切れ味を増した斬鉄剣になった。
ブランクスもさらに低レジン化され、カーボンファイバー密度が増している。その上、細かく見ていけば、セパレートハンドルモデルはさらにエルゴノミックなチューンナップがされているなど、エンスージアスティックな「ファインチューンド」モデルである。
ブランクスに搭載されるガイドも、Fuji最新バージョンの超軽量チタン製となり、通常モデルよりもさらなる軽量化がされている。といっても一円玉1枚程度だが(最大1.5gほど)。
メガバスファクトリーの熟練ロッドエンジニア達が口をそろえて語る、「ファインチューニング」の成果。ベースのオリデスを作った私としては、ベースが良いからだ、と言いたいところだが、見た目をあまり変えずに、よくぞここまでスペックアップしてくれたという賞賛の言葉は、ぐっと押し殺すことにした。なぜなら、良いベースをゼロから生み出すことの方が、大変な仕事だから。
「ファインチューニング」・・・たしかに、随所でやっていることは些細なことだが、それが束になってひとつのロッドとして組み上げられると、確かに「こうも違うのか!?」といったパフォーマンス・アップを体感する。
かつてのTD-ITO(リール)などで私自身も経験してきたことだから、チューニングも、それなりに創造性が求められる仕事であることは知っている。
発表からわずか数時間で予定生産数のすべてが完売してしまった30THアニバ・ロッド、ヘリテイジは、新製法と新素材の圧倒的導入によって、ピークパフォーマンスが即出せた。とても懐の深いバーサタリティとユーティリティをあの軽さで実現できているのは、ひとえに革新的な新技術と新素材の賜物で、魅力的ではあるが、製造コストが高い。
オリデス・カーボンヘッドは、既存技術をベースにプロのチューナーが施した、トガったレーシングユニットを彷彿させる、ゾクゾクするような「切れ味」が増している。やっていることは、重箱の隅をチマチマ突きまわした結果に過ぎないが。
とにかく、「デストロイヤー・カーボンヘッド」モデルには、歴代のデストロイヤー・スペックアップモデルがそうだったように、メガバスファクトリーに勤務するエンジニア達の枝葉末節ともいえる、ミクロな技術的こだわりが随所に反映されている。
まるで、そうしたミクロの積み上げが、ドラスティックなパフォーマンスを生み出すのだ、といわんばかりの匠指向のプレゼンテーション(竿づくり)だが、エキスパートアングラーは、そうした小さなチューンナップの積み上げがもたらす、大きな成果を知っている。
とりあえず釣れればいい、といったウチの甥っ子レベルにとっては、もはやどうでもよい次元の話である。もともと鋭かった刀をさらに鋭くしても、斬るべき相手は同じなのだから。
このロッドをいいと思ってくれる人は、きっと、本職で竿づくりをしているプロの竿屋か竿師(ロッドビルダー)に違いない。
ロッドエンジニアリングを熟知する者にとっては常識だが、腕の延長となる竿は、一昼夜にして出来ることは絶対ない。
30年間もこの仕事に携わって思うことは、名竿は、スポーツカーの名車と同じで、CADや通常のパフォーマンステストで生まれることは一度もなかった。
言わずもがなであるが、独自技術の積み上げと、幾度にも及ぶ技巧面のブラッシュアップを重ねた竿作りの長い歴史だけが、五感の延長となる真の名作を生み出すのは間違いない。